「慮る視点とは何か」
オーガナイズドセッションAの概要
ロボティックス,家族看護学,義肢装具のリハビリテーション学,感性デザイン学から人の心を「慮(おもんぱか)る」とはどう言うことなのかを考えたい思います.人の心を慮ることはデザインするうえで当然のことと考えているはずですが,分野が異なればそのアプローチも異なるはずです.
そこで,
①ロボットというと超人的な存在をイメージしがちですが,「生きている限り自立した生活ができる」ことを保証するためのロボットを考えるとはどういうことなのか.
②義肢補装具を切断者に合わせるために,切断者の痛みや不安感を払拭するために切断者の意見を聞きくが,それが必ずしも最適解にはならないとはどういうことなのか.
③家族が病気になれば,病人へ心が一方的に向かうなど家族間で様々な問題が生じますが,それを修復し,より良い方向へと導く家族看護学の考え方とはどういうものなのか.
④感性評価のためのデザインは,既存の評価法と異なり曖昧な感性を曖昧なまま評価するところにある,とはどう言うことなのか.
という4つのお話しから,各分野の専門家はどのように人の心を捉えようとしているのかを串刺しして見ることで,デザインに活かす知見としたいと思います.
オーガナイザー:岡崎 章(大会実行委員長)
パネリスト
各発表内容
[ロボティックスの広がりに必要なことは]
小林 宏:東京理科大学・教授・博士(工学)
(株)イノフィス 創業者
ロボットというと,特に日本人は,人間に代わる,あるいは人間の能力を越えた何でもできる超人的な存在をイメージしていると思います.残念ながら,そのようなロボットを創り出すためにはまだまだ時間がかかります(いつ出来るか分かりません).約20年前に登場したHONDAのASIMOの登場以来,産業用ロボット以外の,人間に直接関わるロボットの活躍が大いに期待されてきましたが,現状でも大きなビジネスにはなっていないことからも,その難しさはご理解頂けると思います.
一方,私が取り組んでいるのは,あくまでも人間のサポート,アシストをするロボット技術で,私自身が目指しているのは,「生きている限り自立した生活ができる」ことを実現するロボット技術の開発と製品化です.
今回は,着用型筋力補助装置:マッスルスーツ®を始め,人間生活をサポート,アシストする技術をご紹介したいと思います.
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[義肢製作における対話の重要性とは]
浦田 敦:千葉リハビリテーションセンター・義肢装具士
義肢装具士とは、医師の指示の下に義肢・装具を作ることを業とする者です。
私は、リハビリテーションセンターに勤務する義肢装具士として、主に切断者の生活のニーズに即した義肢製作およびリハビリを行っています。切断された肢節の残った部分(断端)を納める「ソケット」と呼ばれるプラスチックは、義足使用者(ユーザー)の断端にフィットするように作ることが重要です。しかし、場合によっては痛みや不快感を生じるため、ユーザーの希望を取り入れながらソケットの形を修正することが必要です。
今回の発表では、義足が適合せず福祉の窓口から相談をうけた二つのケースを紹介します。
これらの義肢製作の経験に共通した、ユーザーとの対話の重要性についてお伝えします。
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[家族から見る看護の重要性とは]
服部淳子:愛知県立大学看護学部・教授・博士(心理学)
家族の誰かに健康問題が生じると,個人だけの問題にとどまらず,家族全体に影響をもたらします。家計を支える父親が病気になったら,家族の経済状況は一変し,子どもの人生設計も変わるでしょう。子どもが入院し,母親が付き添うことになったら,残された家族の生活も一変するでしょう。
医療者は,目の前にいる患者さんだけでなく,患者さんの家族まで視野に入れて援助しなければ,患者さんの苦痛や苦悩を軽減することはできません。母親が病気になれば,その苦痛や苦悩は病気からだけでなく,子どもの養育ができないこと,父親に負担をかけてしまうことなどなど,家族への想いから起こります。患者さんだけでなく,家族にとって,より良い生活ができるように働きかけることが重要です。
家族看護,個でなく全体を見る視点についてお話ししたいと思います。
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[人の心を知ろうとするデザインとは]
岡崎 章:拓殖大学工学部・教授・博士(感性科学)
曖昧な感性は,曖昧なまま評価することで,既存の方法より効果的な評価が可能になります.そのためには,曖昧な感性を曖昧なまま表現させてあげるデザインが必要と考えています.
これくらいがっかりしている,これだけ楽しい,を1から5の数字に置き換えて選択することができると考えているのは,評価したい側のおごりかもしれません.そう考えたのは,患児には5段階評価では無理があると感じたことにあります.ある感性を評価すると言うことは,心理量を測るということになりますが,その心理に見合った方法でなければならないということです.
一方でその心理となる引き金になる感覚量を測ることも重要になってきます.例えば,これだけふさぎ込んでいるのはこれだけの痛みがあるからだというこを知る重要性です.
今回,心理量を測るためツールとして「がっかり度を測るツール」,「概念モデル可視化ツール」を,また,感覚量を測るためにツールとして「痛みのレベルと周期を評価するツール」(当日の7月1日にAppleストアーから販売開始)などをご紹介したいと思います.
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進行
進行手順
主旨を説明した後,パネリストの方々に一人20分程度で順次発表して頂きます.
パネリストの発表を受けてファシリテーターに慮るとはどう言う視点があるのかを串刺しして明示して頂きます.この間100分程度になります.残り20分程度で会場との質疑応答を予定しています.
オーガナイズドセッションの主旨は,概要のとおりですが,人工知能を搭載したロボットが人に思いを馳せるとか,家族看護専門看護師という資格があること自体知らないが,その役割を聞けばなるほどと思うように,他分野における「慮る」というアプローチを知ることで,日々のデザインに活かす知見を得たいと考えています.
<ファシリテーター>
大島直樹:拓殖大学デザイン学部・准教授・博士(デザイン学)
パネリストがそれぞれの分野において考える「慮る」とはどう言うことなのか,その視点を串刺しにして共通点を明示することによって,あらゆる分野のデザインに「慮る」という意義を活かすための討論を促します.
ここでのファシリテーターは,
という役割を担います.
子どものためのデザイン部会ミーティング
部会員以外の方もどうぞ!
6月30日(16:10-17:00)E801教室(E館8階50人教室)
年に一度の顔合わせになります.昨年度同様KDSSとのジョイントで開催予定のご報告と今後の方針について意見交換したいと思っています.
テーマセッション
子どものためのデザイン部会によるテーマセッション
7月1日(土) 9:00 ~ 11:00 (口頭9会場)
7月1日(土) 12:50-14:50 (口頭9会場)
Photo
当日の会場の様子
発表内容は,特集号として出版予定です.
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